空調服用のリチウムイオンバッテリーセットの選び方と上手な扱い方について

空調服は単に着用するだけでは遮熱効果はありません。付属するファンが正常に作動して初めて、外気の温度に影響されない快適な着心地を堪能することができます。空調服はファンなどの送風機器こそが重要な選択肢と言っても過言ではありません。

過酷な環境でも快適に過ごすため、送風機器の良し悪しの見分け方や上手な扱い方について学びましょう。

空調服の遮熱性は送風機器の性能に左右される

空調服を着ると暑さを感じにくくなりますが、これは衣服の内側に形成された空気の層が外気の熱を遮断するためです。

空調服そのものが涼しいのではなく、熱を遮る空気の層によって外気の温度に影響されなくなるのが涼しさの体感に繋がっています。空調服に付属しているファンの性能が空気の層の形成に大きく影響している事実は無視できません。

ファンのパワーが強いほど空気の層も厚くなり、遮熱性も向上します。また、ファンの回転数は電源として使用するバッテリーの出力も関係しているので、送風機器全体の性能が空調服の着心地を左右すると言っても過言ではありません。

高額な空調服ほど着心地が良いとされていますが、これは高性能な送風機器が付属しているのが理由です。

乾電池式とリチウムイオンバッテリー式の違い

初期の空調服は乾電池を電源にしていました。衣服に装着できるほど小型化させるのが開発時の課題でしたが、当時の技術では空気の層を形成するだけの出力を持つ小型バッテリーを作るのは非常に困難でした。無理に小型化させると必要な出力が得られないばかりか、液漏れによる破損の危険もあったためです。

体に密着させて使用する物なので安全性が最優先であり、結果として乾電池を電源にした送風機器の完成に至ったのです。乾電池は入手が容易なのが大きなメリットですが、その一方でファンを高速回転させるだけの出力は持っていないデメリットもありました。

遮熱性を持たせるだけの空気の層を形成することが難しく、すぐに電池切れになってしまうのも事実です。それでも着るだけで涼しさを感じる空調服は過酷な現場で働く人から高く評価され、瞬く間に普及しました。外気の熱に影響されにくい空調服は体温の急激な上昇による熱中症の予防に最適とされ、仕事に限らず部屋着としての需要も増加しました。

その一方で乾電池式のファンはパワーが弱く、十分な遮熱性が保たれなかったのも事実です。外気の熱をほとんど遮断できるだけの高い遮熱性を持つ空気の層を作るためにはファンの高速回転が必須条件であり、その条件を満たすための高出力な電源の開発が急務でした。

やがて必要な条件を満たした性能を持つリチウムイオン式の小型バッテリーが完成し、ほとんど汗をかかないほどの涼しさを感じさせることが可能になったのです。リチウムイオン式のバッテリーは出力の高さからファンを高速で回転させることができます。

回転数が多いほど空気の層も厚くなるので遮熱性の向上を期待できます。また、持続時間も長く充電も可能なことから、乾電池式と比べると維持コストを低く抑えることができるメリットがあります。

バッテリーセットは必ず同じメーカーで統一する

空調服はいくつもの衣料メーカーが販売していますが、付属しているファンやリチウムイオンバッテリーなどの送風機器も同様に複数の電機メーカーが開発や販売を行っています。買い替え用にバッテリーセットだけが単体で販売されることもありますが、購入の際は必ず同じメーカーで統一しなければいけません。

空調服用の送風機器は用途は同じ用途でもメーカーによって性能がわずかに異なります。特にバッテリーについては充電の容量や出力の数値が異なるため、別メーカーのファンや充電器に繋げると故障や漏電などのおそれがあるので危険です。

接続端子の形状が類似している物でも必ずメーカーを確認し、同じメーカーの物だけを繋げるように心がけます。

用途別にバッテリーを使い分けるのが快適に着こなすコツ

空調服で感じる涼しさは空気の層の厚さで決まります。基本的にファンが高速で回転するほど空気の層も厚くなりますが、一方でバッテリーの減りも早くなるので注意が必要です。予備のバッテリーを用意する方法もありますが、高速回転に対応する高出力のパワフルなバッテリーを使うのがもっとも確実と言えるでしょう。

充電可能な容量が大きいので長時間使い続けてもバッテリー切れになる心配はほとんどありません。非常に気温が高い場所での作業には高速回転用、比較的温度が低い場所では通常用と使い分けるのが上手な扱い方です。

充電式バッテリーを長く使い続けるための工夫

何度でも繰り返して使うことができるのが充電式バッテリーのメリットですが、使い方を誤ると性能が大幅に低下するおそれがあります。出力が下がってファンの回転数が減ってしまう他、頻繁に充電をする羽目に陥ってしまうケースも少なくありません。

バッテリーは長く使用できますが消耗品でもあるので、次第に性能が低下すること自体は避けられません。古いバッテリーはファンを高速で回すだけの出力がないので速やかに交換するのが賢明ですが、購入してからあまり使っていないのに性能が落ちてしまったバッテリーは扱い方に問題があったと言えるでしょう。

短期間に何度も充電を行ったり、逆にほとんど充電を行わないバッテリーは傷みやすい傾向にあります。充電による性能の低下はサイクル劣化と呼ばれ、充電を行うごとに少しずつ容量が減少するのが特徴です。

空調服に使われているリチウムイオンバッテリーの場合、本来の容量の半分を切ると急激に性能が低下します。ファンが全く回らなくなることもあるので、充電の回数が多くなったと感じたら新品に交換するのが賢明です。一方でほとんど充電を行わないことで起こる性能の低下は保存劣化と呼ばれています。

満充電の状態は高電圧であり、バッテリーには良くありません。

また、完全に放電した状態になるとバッテリー内部の保護回路が誤作動を起こし、充電ができなくなります。充電式のバッテリーは満充電や完全放電を避け、短期間の頻繁な充電は行わないのが長持ちさせる秘訣です。

バッテリーへのこだわりが空調服を上手に着こなす条件

空調服の着心地はファンの電源として使うバッテリーの性能で決まると言えます。

バッテリーの容量や出力で使用時間やファンの回転数が変わるので、必要に応じて使い分けるのが空調服を上手に着こなすテクニックです。

また、バッテリーは消耗品であることを把握し、定期的に交換することを忘れてはいけません。使用中のバッテリー切れを避けるために予備を携帯するなど、使用目的に適した工夫も求められます。